防錆油の役割
錆びるとは・・・
一般に自然界において、金属は単一の原子だけが集まった状態で存在(金や白金、銀、水銀)するものは稀で、ほとんどは何らかの化合物、特に酸素と結合した酸化物や硫黄と結合した硫化物として多く存在しています。これは、金属が単一の原子だけで存在するよりも、酸化物や硫化物として存在する方がエネルギー的にとても安定した状態だからです。しかし、私たちの生活の中で使われる金属は、自然界に存在する金属酸化物や硫化物から酸素や硫黄等を切り離し、金属だけを単離して使用されるものが多くあります。
ここで、最も多く利用されている金属として鉄(Fe)を例に挙げますと、鉄は自然界では鉄鉱石という鉄の酸化物として産出されます。そして、その鉄鉱石から精錬によって酸素原子や不純物を除去し、高純度の鉄を単離します。この精製された鉄が、板状や棒状に引き伸ばしていろいろなものに加工される訳ですが、先に申し上げました通り、金属単体の状態、即ち鉄そのものとして存在するよりも、酸化物として存在する方が自然界では安定した状態ですので、周囲の酸素と水が鉄に付着すると酸化鉄の状態に戻ろうとしてしまいます。これが皆様が良く見かける赤褐色の錆で
あり、鉄が『錆びる』という事です。
錆を防ぐには・・・
錆を防ぐには、まず、金属表面を酸素と水分が接触しない様に遮断する事が考えられます。
また、酸素や水分以外にも錆を促進する原因として、塩化物イオンや大気中の窒素酸化物、硫黄酸化物、埃等があり、これらも遮断する事も大事です。
金属を錆から守る方法の一つとして、防錆油や樹脂コーティング等によって金属表面を被覆する方法があります。
防錆油が鉄を錆から守る仕組みは下図の通りです(例:溶剤希釈形さび止め油)。
その他に表面を被覆する方法として、メッキやガラス、セラミックスによるコーティングや、化成処理(表面を薬剤と化学反応させて錆び難い化合物へと変化させる)を施す方法が有ります。
また、表面を被覆する方法以外では、常に金属へ電子を与え続ける電気防食というものも有ります。
防錆油(さび止め油)の効果的な使用方法
防錆油を金属部品に塗布する際、金属表面ゴミや埃が付着したまま塗布すると、十分な防錆効果が得られない事があります。特に、金属加工の場面においては、切削時の切粉やプレス成形時の金属粉、水溶性加工油剤の水分等も防錆効果を妨げる要因となります。従って、防錆油を塗付する際に、前処理として、溶剤脱脂やアルカリ脱脂、脱水防錆油(水置換性洗浄剤等)を使い、金属製品を洗浄して十分に腐食要因を取り除いておくと、防錆油が最も有効に働きます。
防錆油の種類
金属のさび止めとして、JIS規格で分類されている油種(下図)の他、水溶性、気化性、グリース状、その他様々な種類があり、各種目的に合わせて使用されています。
JIS規格によるさび止め油分類表(規格では粘度や膜厚によって細分化されています)
分類 | 記号 | 膜の状態 | 主な用途 |
指紋除去形さび止め油 | NP-0 | 低粘度油膜 | 機械一般、機械部品等に付着した指紋除去及びさび止め |
溶剤希釈形さび止め油 | NP-1 | 硬質膜 | 屋内及び屋外でのさび止め |
NP-2 | 軟質膜 | 主として屋内でのさび止め | |
NP-3-1 |
軟質膜 |
主として屋内でのさび止め(水置換形) | |
NP-3-2 | 中高粘度油膜 | ||
NP-19 | 透明、硬質膜 | 屋内及び屋外でのさび止め | |
ペトロラタム形さび止め油 | NP-6 | 軟質膜 | 転がり軸受の様な高度な機械仕上げ面等のさび止め |
潤滑油形さび止め油 | NP-9 | 低粘度油膜 |
金属材料及び金属製品の錆さび止め |
NP-8 | 低粘度油膜 | ||
NP-7 | 中粘度油膜 | ||
NP-10-1 | 低粘度油膜 | 機器類内部の一時的さび止め | |
NP-10-2 | 中粘度油膜 | ||
NP-10-3 | 高粘度油膜 | ||
気化性さび止め油 | NP-20-1 | 低粘度油膜 | 密閉空間内でのさび止め |
NP-20-2 | 中粘度油膜 |
防錆油の選び方
防錆油を選定される際は、使用目的、防錆期間、保管環境、前工程、JIS規格の分類記号等からご判断頂く他、お問い合わせ頂けましたら適応製品を選定させて頂きます。
ご参考までに、下の表から使用目的別に弊社代表製品をご紹介致します。
ご希望の条件が見当たらない場合は、弊社までお問い合わせ下さい。
弊社製品名
左記の使用用途を選択して頂きますと
こちらに弊社製品名が表示されます。
《指紋除去形さび止め油(JIS K 2246 NP-0 相当)》
RP-01 水置換性 指紋除去 |
水置換性と同時に指紋の成分を溶解除去する性能を持つ防錆油。 指紋等の汚れを溶解・除去すると同時に、防錆成分が強力に金属面へ吸着して錆止め効果を発揮。 (第4類 第2石油類 荷姿:200Lドラム、18L缶) |
色相 (ASTM) |
密度 (15℃,g/cm3) |
動粘度 (40℃,mm2/s) |
引火点 (℃) | 錆止め期間※ |
<5.0 | 0.860 | 3.00 | >40 | 3ヶ月 |
《溶剤希釈形さび止め油(JIS K 2246 NP-2 相当)》
RP-102C ワックス状被膜 長期防錆 |
溶剤揮発後、ワックス状被膜を形成する防錆油。 過酷な条件下でも長期の錆止め性を必要とする屋内外での防錆に使用。 (第4類 第2石油類 荷姿:200Lドラム、18L缶) |
色相 (ASTM) | 密度 (15℃,g/cm3) | 動粘度 (40℃,mm2/s) | 引火点 (℃) | 錆止め期間※ |
>8.0 | 0.828 | 3.30 | >40 | 6ヶ月 |
《溶剤希釈形さび止め油(JIS K 2246 NP-3 相当)》
RP-33 洗浄性 短中期保管 |
低粘度で、特に洗浄性能を考慮した防錆油。 優れた洗浄性と錆止め性を有しており、洗浄後そのまま数ヶ月間の保管が可能。 精密部品等の錆止めに適する。 (第4類 第2石油類 荷姿:200Lドラム、18L缶) |
色相 (ASTM) | 密度 (15℃,g/cm3) | 動粘度 (40℃,mm2/s) | 引火点 (℃) | 錆止め期間※ |
<4.0 | 0.836 | 3.74 | >75 | 2ヶ月 |
《溶剤希釈形さび止め油(JIS K 2246 NP-3 相当)》
RP-75N 鋼・アルミ 洗浄性 |
鋼板やアルミニウム板、及び機械部品等の一時保管に適した洗浄兼防錆油。 錆止め性は中間防錆油としての条件を満たしており、広範囲に使用可能。 (第4類 第2石油類 荷姿:200Lドラム、18L缶) |
色相 (ASTM) | 密度 (15℃,g/cm3) | 動粘度 (40℃,mm2/s) | 引火点 (℃) | 錆止め期間※ |
<6.5 | 0.842 | 4.01 | >70 | 3ヶ月 |
《溶剤希釈形さび止め油(JIS K 2246 NP-3 相当)》
RP-113 洗浄性 短中期保管 |
鋼板用洗浄防錆油として、錆止め性が良好。 鋼板等の保管用防錆油としても優れた性能を有する。 (第4類 第3石油類 荷姿:200Lドラム、18L缶) |
色相 (ASTM) | 密度 (15℃,g/cm3) | 動粘度 (40℃,mm2/s) | 引火点 (℃) | 錆止め期間※ |
<6.0 | 0.833 | 3.69 | >80 | 3ヶ月 |
《溶剤希釈形さび止め油(JIS K 2246 NP-3 相当)》
RP-123 軽度潤滑 中間工程 屋内短期保管 |
低粘度の極薄膜型防錆油。 軽度の潤滑性を必要とする精密機械部品や金属加工部品等の中間工程、屋内での短期保管に際し優れた錆止め効果を発揮。 ベタツキが少なく、水置換性を有する。 (第4類 第2石油類 荷姿:200Lドラム、18L缶) |
色相 (ASTM) | 密度 (15℃,g/cm3) | 動粘度 (40℃,mm2/s) | 引火点 (℃) | 錆止め期間※ |
<3.5 | 0.808 | 1.03 | >40 | 1ヶ月 |
《溶剤希釈形さび止め油(JIS K 2246 NP-3 相当)》
RP-163 洗浄性 短中期保管 |
鋼板や棒鋼、鋼管等の素材、これらの成型加工部品等の洗浄や一時保管、輸送時等に使用する防錆油。 中間防錆油として優れた性能を有する。 (第4類 第2石油類 荷姿:200Lドラム、18L缶) |
色相 (ASTM) | 密度 (15℃,g/cm3) | 動粘度 (40℃,mm2/s) | 引火点 (℃) | 錆止め期間※ |
<4.5 | 0.840 | 3.99 | >75 | 3ヶ月 |
《溶剤希釈形さび止め油(JIS K 2246 NP-3 相当)》
RP-3020 短中期保管 |
低粘度で、水置換性、錆止め性等の諸種の必要性能を有する。 家電部品等の屋内短中期保管に適する。 (第4類 第2石油類 荷姿:200Lドラム、18L缶) |
色相 (ASTM) | 密度 (15℃,g/cm3) | 動粘度 (40℃,mm2/s) | 引火点 (℃) | 錆止め期間※ |
<6.0 | 0.876 | 4.15 | >40 | 3ヶ月 |
《溶剤希釈形さび止め油(JIS K 2246 NP-3 相当)》
Washol 23 洗浄性 短期保管 |
金属加工面等に残る金属屑等の異物や、微量の水分等の付着物に対して優れた洗浄性を持つ防錆油。 鋼板や精密部品等の洗浄防錆油として優れている。 (第4類 第2石油類 荷姿:200Lドラム、18L缶) |
色相 (ASTM) | 密度 (15℃,g/cm3) | 動粘度 (40℃,mm2/s) | 引火点 (℃) | 錆止め期間※ |
<5.0 | 0.825 | 2.23 | >80 | 1ヶ月 |
《溶剤希釈形さび止め油(JIS K 2246 NP-19 相当)》
RP-211T 速乾性 薄膜形成 |
速乾性の溶剤希釈形防錆剤。乾燥後は樹脂状の硬化皮膜を形成。 各種金属部品や鋼管等の屋内中長期保管あるいは移送、輸出に際し、優れた錆止め効果を有する。 (第4類 第2石油類 荷姿:200Lドラム、18L缶) |
色相 (ASTM) |
密度 (15℃,g/cm3) |
動粘度 (40℃,mm2/s) |
引火点 (℃) | 錆止め期間※ |
>7.5 | 0.931 | 13.7 | >6 | 2ヶ月(屋外) |
《潤滑油形さび止め油(JIS K 2246 NP-9 相当)》
RP-25 潤滑性 屋内中期保管 |
低粘度の防錆潤滑油で、潤滑性を必要とする精密機械部品や鋼板等の 屋内中期保管あるいは移送、輸出に際して優れたさび止め効果を発揮。 水置換性があり、僅かな水が付着していても使用可能。 (第4類 第2石油類 荷姿:200Lドラム、18L缶) |
色相 (ASTM) | 密度 (15℃,g/cm3) | 動粘度 (40℃,mm2/s) | 引火点 (℃) | 錆止め期間※ |
<5.0 | 0.918 | 12.8 | >130 | 3ヶ月 |
《特殊防錆潤滑油》
PCL-2271 潤滑性 長期保管 |
比較的低粘度の防錆潤滑油。 機械器具・精密部品等の長期保管、特に鋼板等の輸出積み出し・輸送用等に適する。鋼板加工時に、一般の塑性加工油を用いずに加工可能。 (第4類 第2石油類 荷姿:200Lドラム、18L缶) |
色相 (ASTM) | 密度 (15℃,g/cm3) | 動粘度 (40℃,mm2/s) | 引火点 (℃) | 錆止め期間※ |
<6.0 | 0.923 | 21.4 | >100 | 3ヶ月 |
《脱水防錆油》
セパール 脱水(水切り) 一時的防錆 |
軽質油膜型の脱水防錆油。 金属部品の製造工程中における水及び水溶性切削油等を簡単に除去し、そのまま一時的な錆止め用として使用可能。 (第4類 第2石油類 荷姿:200Lドラム、18L缶) |